一年でゲーム会社をやめた話

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4月、春ですね。

新学期に新入社員、フレッシュな季節です。

 

去年の4月、僕は新卒でゲーム会社に入社しました。

企画です。

そして一年後の3月末、ゲーム会社を退職しました。

 

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やめたのは色々な理由がありましたが、

これからゲーム会社に入りたい、特に

ソシャゲを作りたいと思っている人の参考になればと思います。

 

【どういうものを作っていたか】

iOSAndroid向けネイティブアプリ(基本無料、課金制)

・IPもの(いわゆる萌え系。アニメ・グッズ展開されている規模のもの)

 

【会社規模】

・コンシューマーソフト中心開発会社(中小企業、受注中心)

・プロジェクト体制:10人(+外注)

 

【業務内容】

・企画業務(仕様書、各担当者との打ち合わせ、進行、レベルデザイン等)

・社内・社外発注(サウンド、イラスト)

・テキスト周り、スクリプト

 

【プロジェクト状況】

・(新卒入社した時点で)半年ほど走っていたソシャゲプロジェクトにアサイン。

 一年ほど、ずっとそのプロジェクトを担当していたことになります。

 

【スペック】

・普通の文系私大卒

 いままで、ゲーム開発や運営について、専門的に学んだことはありませんでした。

 もちろんゲームは好きで、コンシューマからアプリまで、ジャンルを問わず積極的にやってきました。

 学生時代同人でゲームを作っていたのである程度知識がありました。

 

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【やめた理由】

①人間関係

②体力、モチベーションの低下

③そのほか、もろもろ

 

たぶん、③が一番理由としては大きいと思います。

 

①人間関係

会社をやめる理由としてありきたりですが、上位にくる理由ですね。

 

僕はプロジェクトの途中から入った新人、ということもあり、

最初は右も左もわからず、言われたことをこなすことを求められました。

(実際、それしかできなかった。)

最初の数か月、僕もゲームを開発する以上、提案や発案したいと

口出したこともありましたが、「だまっていろ」「お前になにがわかる」という態度であり、それは僕が新人であり、何もわかっていないからだと思いました。

そのため、仕様書を作るのも上の人から言われたことをヒアリングし、

仕様書化する…といった内容で、退屈さを覚えたのは事実です。

 

プロジェクトに入ったとき、「このプロジェクトは年上の人たちばかりだから、君のような世代の意見を期待している」と言われたことを思い出します。

(僕が入る前のプロジェクトの平均年齢は40代でした。)

僕が在席した一年のうち、僕の意見が通ったことはほぼありませんでした。

否定される風潮にうんざりし、僕は次第に意見を発言しないようになりました。

 

『僕が新人であり・一番年下であり・プロジェクトの途中から入ったから』というのは、意見が重要視されない大きな理由だったと思います。

やはり、プロジェクトを立ち上げた・リリースからやってきた企画の人は誇りを持っているようでした。逆に言えば、自分の意見以外認めない、という人でもありました。

僕は、正直既にリリースされていたこのゲームの出来は問題がある・改善すべきところがたくさんあると自覚していたため、結構口うるさく改善案を提唱しましたし、仕様(提案)書も書きました。

でも、僕がアサインされてから一年経ちましたが、僕が抱いている「改善すべきところ」はほぼ改善されていません。

 

僕の言い方が生意気なところはあったとは思います。僕は初めて担当するゲームを良くしたいという気持ちでいっぱいでした。

ゲームを良くしたい、ユーザーのためにこういうことをしたい、といった提案や改善案を出し、それが却下される…ということが繰り返されることで、確実に人間関係に軋みが生まれて行ったと思います。

 

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②体力、モチベーションの低下

これも仕事をやめる上で、よくある理由ですね。

ゲーム業界が激務というのは、一般的によく知られているのではないかと思います。

実際、勤務時間は長時間でした。毎日3時間~4時間の残業があり、状況次第で休日出勤、残業代は出ない(裁量労働制)、薄給。

 

救いだったのは、それでも業務内容にはやりがいがあったことです。

 

そうした救いがあった一方で、先述したような人間関係や、プロジェクトの風潮があり、自分がいる意味があるのだろうかと自問するようになりました。

企画なのに、ゲーム内容自体に干渉できない歯がゆさ。

体力的に疲労が蓄積していくのと同時に、そういったもんもんとした「自分のいる意味」について考えていくうちに、仕事へのモチベーションが低下していきました。

 

体力とモチベーションが低下するとどうなるか。

考えなくなり、ただ作業するだけの人間になり果てました。

 

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③そのほか、もろもろ

商業ゲームのスタンス、に自分が合っていなかった可能性があります。

これが商業ゲームなのか、と納得して業務をすることができればよかったのかもしれません。

 

IPものの題材となっているアニメも、僕は幸い視聴しており、大好きでしたので、そんないちファンとしての意見も貢献できたら、と思っていました。

いざ仕事をはじめると、みんな題材になっているアニメを見ていない。僕が、「こういうところがよくて」「このキャラクターの魅力は」など言ったりしても、『仕事だよ?』と笑われてしまう始末。

IPもののゲームというのは、いかにファンを満足させるか、いきいきとしたキャラクターを描けるか、という意味で、題材を把握しておくことは大前提だと思います。

それを、題材を好きではないひとたち、さらに言うと、アニメもキャラまでも把握できていない人たちが作るゲームが魅力的でなく感じるのは当たり前な気がしました。

 

僕が入るまで、大部分のキャラの内部ステータス(原作に由来する属性等、設定面)が間違ってデータ設定されていたぐらいです。

僕がこの会社でのゲーム制作に不安を抱くのも無理もないような気がします。

 

先述した、「僕の意見が通らない」ことについても、数か月後に採用されるのです。他の人の意見によって。それは僕が言ったことと全く同じだ。

売り上げ目標や、施策によって起こりうることも、僕は前もってこうなるであろうと言ってきました。その通りになったことがいくつもあります。

しかし、発言時点では考慮もされないのです。

僕は発言しなくなり、この現場は辛抱ならないと強く感じました。

 

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誰が悪かったというのでしょうか?

僕も、アサインされてから一年という月日があったというのに、ゲームを良くすることができなかったばかりか、退陣することになり、非常に心苦しく思いますし、僕にも当然悪かったところ、至らなかったところはあります。

もっとうまく立ち回って、ゲームをよくすることができたのではないかと、今でも思います。

堪え性がないと非難されると思います。

自分の好きな業界に行ったのだから、それぐらい耐えろと。

それは本当に自分のふがいないところです。

 

念願のゲーム会社、ゲーム業界。

正社員で、今時期未経験の新卒を採って下さったことには感謝してもしきれません。

楽しかったことはありました。やりがいも。

でもそれ以上に、『ニセモノをつくっている』感、しかも、言われたことを淡々とこなしているいるだけ――というのが、耐えがたく、苦痛でありました。

努力したつもりでしたが、どんな発言や行動をしても、周りの人は変わりませんでしたし、人が変わらないということはこのプロジェクト、このゲームは変わらないということでもありました。

(人を変える、ということ自体、傲慢とは思います。)

閉塞感のあるプロジェクトであり、漫然とした空虚感、みな作業としてもくもくと、暗い目をしてパソコンに向かっている…そんな絶望感があり、将来性も希望もないゲームでした。

だから、ゲーム会社をやめました。一年で。

 

一番申し訳ないのは、この一年で課金して下さったユーザーのみなさまで、

こんないつ沈むかわからないゲームに、課金なんてしない方がいいのにとさえ思いました。

 

好きな業界だからといって、好きなものを作れるとは限りません。

それを享受できるひとが、ゲーム会社に行くべきです。